silent night

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真っ赤に燃え上がるような城がすぐ先にあった。 馬車の従者の所へ行くと、従者は何者かに真っ二つに斬られていた。 辺りを見渡すとあの男が立っていた。 「キョウカ!」 男は私の腕を掴んだ。 「何を!離して!!」 金髪の若い男がそばにある森から現れ私の腕を掴む。 「行くよキョウカ!」 「誰?何?い、いや…」 身体中に強烈な圧力がかかると周りが金色に輝いた。 徐々に圧力が弱まりゆっくり目を開けると、赤と金の装飾の派手な部屋の中にいた。 「ここ…は?」 金髪の若い男が私をいきなり抱きしめた。 「キョウカーっ!」 「なっ、やめろ!無礼な!」 その若い男は私からゆっくり離れるとため息をついた。 「そっか、記憶…消されたままか…」 そう呟くと真っ赤なベッドにドサリと座った。 「無い…無い!」 あの銀髪の男が自分の身体をあちこち触って一人で騒ぎ始めた。 「これじゃ、予定通りにいかない…ちくしょう!」 「カイン落ち着いて…指輪無くしたの?」 「あぁ…無い!…あの時か…くそっ!!」 銀髪の男が悔しそうに上着のポケットを握りしめる。 「どうする?アベルとマルコシアスに、知らせないと!」 「俺は指輪を探しに行く!!」 あの男が一瞬で私の目の前から姿を消した。 「作戦変更!カインが指輪を探しに人間界に戻ったから、時間稼ぎして!!」 金髪の若い男が大きな独り言を言った…。 そして私に振り返ると私の肩を抑えて座るように促す。 「何なの?一体、貴方誰?私をさらって何をする気?」 「キョウカ…雰囲気、全然違うね。ちょっとトゲトゲしくて…やな感じ。まぁ、仕方ないけどね。早く以前のキョウカに戻って欲しいよ…。」 「以前の私…、貴方も私を知ってるの?」 「勿論だよ!僕達はキョウカをルシファーから奪い返しに来たの!!キョウカはずっと、僕達と一緒にいたんだよ!思い出してよキョウカ…」 その若い男の目を見つめた。 男も潤んだ瞳で私を見つめ返す。 でも、私は…何も思い出せない。
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