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部室の扉を開けると、いつもの席に腰を座り、いつも通り読書をしている座敷童こと江戸原琉歌[エドハラリュウカ]の姿が見えた。扉の音に顔を上げた彼女と目が合う。
「本野[ホンノ]君は今日も重役出勤ですね。さすが部長です。その志、尊敬します」
彼女は無表情のまま、何の抑揚もない口調で言った。相変わらずキレッキレの嫌味だ。こちらに非があると毎度パターンを変えて嫌味を言ってくれる。最近はどう皮肉ってくるのか楽しみにしているところがある。別にマゾヒストではない。
「十分遅れただけじゃん……。掃除が長引いたんだよ」
「掃除すら満足にできないんですか? さすが部長です」
とりあえず俺を馬鹿にしたいだけのようだ。今日は調子が良いらしい。調子が良いときは俺への罵倒、皮肉、その他精神攻撃の頻度が高くなる。この一ヶ月で分かった江戸原琉歌の生態の一つである。つまり、彼女の調子と俺のテンションは反比例する。
彼女は満足したのか、再び手元の本へと視線を落とした。今日はまた随分と分厚い本を読んでいる。精神攻撃から解放され、いつもの席に腰を下ろす。鞄から今日の宿題を取り出し、だらだらと手をつけ始める。
部活と言っているが、目的も活動内容も曖昧である。だから、基本的に俺と江戸原琉歌は各自好きなことをしている。彼女は大抵の場合ずっと本を読んでいる。俺は宿題をしたり、興味のある教科の勉強をしたり、仮眠を取ったりしている。
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