第1章

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 そんなことを考えていると、背中に突然衝撃が走った。誰かが思いっ切りぶつかってきたらしい。 「栞、何考えゆうがー?」  振り返ると一人の女子生徒が立っていた。東條奏多――最初の席替えで後ろの席になった騒がしい奴である。特別小柄な訳でもないのだが、その仕草などからリスなどの小動物が連想される。関係ないが、栗鼠って漢字で書くと可愛さが半減するから不思議だ。  四国の南に位置する県の出身で、高校入学と同時に引っ越してきたらしい。まだ方言が抜けていない。というよりも、わざと方言で喋っている節がある。申し訳ないが、俺の可愛いセンサーは反応を示さない方言である。博多弁は可愛いって聞いとーったい。 「別に何も考えてねえよ」 「えー、面白くないなあ。次はもっと笑える答えを期待しちゅうき」 「笑える答えって何だよ」 「知らん! 自分で考ええや。そんなんやと女子にモテんで」  要求しておいて丸投げとは酷い奴である。いつでも面白いことを言わなければモテないのか。お笑い芸人がモテることを考えるとユーモアは大切なのだろうが、それを一般人に要求されても困ります。
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