第1章

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「ていうか、早く掃除行かんと先生に怒られるんやない?」 「行こうと思ったら、お前が話しかけてきたんだろ……」 「私のせいかー。もし怒られたら慰めてあげるよ!」  恨めし気な目を向けると、東條は誤魔化すように笑みを浮かべて言う。それを見ると責める気持ちもなくなってしまうからどうしようもない。小動物的な彼女は庇護浴を刺激するからずるい。かわいいは正義なのである。 「ジュースでも奢れ。じゃあ、また明日な」 「えー、100円までね。また明日!」  自販機の商品120円からしかないじゃんという突っ込みが頭に浮かぶが、突っ込んでいると会話が終わらないため言葉を飲み込む。そのまま荷物を持って席を離れた。 「東條さん、真面目に掃除してくださいね」  教室を出て階段へ向かっていると、後ろから長谷川先生の声がした。あいつは何をやっているんだろうか。高校生にもなって幼い子どもみたいな奴である。
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