細い線

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アベルの言葉に何も答えられず黙り込んでしまう。 「…決められないか。」 アベルは私の腕を引っ張ると指輪を見つめた。 「この指輪に残ったエネルギーは、魔法を使えば10日…保つかどうか…。もし、指輪を外してキョウカ自身の魂で生きるなら、それなりの覚悟が必要だ。魔力の弱いキョウカに襲いかかる悪魔も多いだろう。」 アベルの言葉を黙って聞いていた。 「どの選択をしても、誰もキョウカを責めはしない。だが、まだカインの所に行くのは早いんじゃないか?」 私は首を振った。 「できる事なら早くカインと次の運命を歩きたい…」 アベルはため息をついた。 「エネルギーが切れて死ぬのは相当苦しいぞ。」 「構わない。誰かを傷つけたり、奪う事はしたくないし、愛しい息子に追いかけ回されて逃げ続けなければいけない事も耐えられない。こんな事になるなら、ルイから離れなければ良かった。私に死が訪れるまで、ルイのそばにいれば良かった。」 堪えきれず涙を流した。 「…ルイとは離れなければならない定めだ。それはカインの願いでもある。苦しいかもしれんが、それは諦めてくれ。お前がそれ以上の苦しみを耐え抜けるとは思わんからな。」 ルイの子供を産むという苦しみ…、考えただけでも頭が痛くなる。 「カインが望んだように、あの人間のそばで生きたらどうだ?お前の魂でも守られたあの土地にいれば、ルイからも他の悪魔からも身を守れる。」 「…私、なんの為に生きなきゃいけないの?カインもいない、ルイにも会えない。アベル!私をカインの所に行かせて!!もう一秒も生きたくない!!」 アベルの平手が飛んできた。 「甘えるな!お前の命の為にカインがどれだけ命を削り、お前のそばにいたせいでカインは…」 「…なに?どういうこと?」 アベルが口を噤みソファに腰掛けるとため息をつく。 「とにかくまた自殺行為をする事は許さん。与えられた時間を生き抜かなければ、次に生まれ変わる事は出来んぞ。」 アベルはワイングラスをテーブルに置くと立ち上がった。 「指輪を外したいなら、外してやる。私はあの人間のそばで暮らす事を勧める。」 指輪が光る左腕を恐る恐るアベルに差し出しかけて、手を引っ込めた。 「…もう少し考えさせて…」 「ルイが人間界に来る前には決めておけ。三日後にまたここに来る。それと…シュウを…これ以上傷つけるな。」 言い終えるとアベルは姿を消した。
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