1 泡の思い出

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2月14日。聖バレンタインデー。 「女の子が好きな男の子にチョコを渡し、勇気を出して告白する日」 日本では、そう言われている。 小学校最後のバレンタインデー。 気合を入れて、お母さんに教わりながら夜遅くまでかかって作ったトリュフ。 学校が終わるとすぐに家に帰り、お気に入りの紺のワンピースを身に着け、少し大人っぽい黒のコートを羽織る。 お母さんに「気をつけて」と言われ、顔を赤くしながら彼の家までやって来た。彼の家の前で何度もインターホンを押そうとするが中々勇気が出ない。 ウロウロしている姿は、はっきり言って怪しい。 トリュフの入った袋を両手で大事に持ちながら、ドキドキする胸を抑え大きく深呼吸をする。 心臓が飛び出しそうだ。 「……頑張れ!私」 自分を励まし、私、佐々木夏葉(ささき・なつは)は震える指でインターホンを押した。
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