1 泡の思い出

3/7
399人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
大丈夫……大丈夫。 何度も心の中で呪文のように唱えた。 大きく息を吐き、彼の家の2階を見上げる。 ……樹(いつき)、受け取ってくれるかな?喜んでくれるかな? 思い浮かべたのは、物心ついたときから、ずっと傍にいて遊んでいたお笹馴染の見城樹(けんじょう・いつき) 母親同士が高校の同級生らしく、そのままずっと仲が良くて、私達も常に一緒だった。 ――だから、樹のことを好きになるのに時間がかからなかった。 だから決めたんだ。 今年のバレンタインにチョコをあげて告白するって。 「あら夏葉ちゃんいらっしゃい。樹ね?――」 樹が出て来た時のシュミレーションをしていたら、煉瓦造りの洋館のドアが開き一人の女性が現れた。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!