第4話

7/35
前へ
/35ページ
次へ
少しだが会話を交わした仲だ。死体だからと恐れる必要があるのか、と自分に言い聞かせてみたが、 所詮、昨日初めて会った男。目の前に転がった肉塊は、ただの死体なのだ。 後退するアサ子の背中に何かがぶつかって行き止まった。 「ヒッッ!!」 驚きの余り、体が跳ねた。 恐る恐る、後ろを振り返った。 目に映ったのは、鼠色のズボンだ。 アサ子は上へと視線を走らせた。 「何してんだ、お嬢さん」 木漏れ日に照らされたその声の主は黒川だった。 生きた人間との接触に少し安堵しつつも、黒川の足にぶつかった背中を慌てて離した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

218人が本棚に入れています
本棚に追加