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少しだが会話を交わした仲だ。死体だからと恐れる必要があるのか、と自分に言い聞かせてみたが、
所詮、昨日初めて会った男。目の前に転がった肉塊は、ただの死体なのだ。
後退するアサ子の背中に何かがぶつかって行き止まった。
「ヒッッ!!」
驚きの余り、体が跳ねた。
恐る恐る、後ろを振り返った。
目に映ったのは、鼠色のズボンだ。
アサ子は上へと視線を走らせた。
「何してんだ、お嬢さん」
木漏れ日に照らされたその声の主は黒川だった。
生きた人間との接触に少し安堵しつつも、黒川の足にぶつかった背中を慌てて離した。
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