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「仕方ないけどさ。生命保険の受け取りは私の名義になってたし、私が捕まった時は、最初の主人はとっくにお墓の中だったしね」
「最初の主人ってことは……。じゃあ、殺そうとしたのは2番目の旦那さんってことですか? なぜ殺そうと……?」
「その男が、最初の主人を殺したからよ」
「え? でも、確かさっきは心筋梗塞って……」
「そう。話せば長くなるんだけどさ、最初の主人は、2番目の主人から借金してたのよ。料亭を経営してたんだけど、うまくいかなくて苦しくなる一方で、期限までにお金を返すなんて難しくてさ。そんな時、アイツが話を持ちかけてきたのよ」
「話?」
「うん。私の体を寄越すなら、返済日を待ってやるって。勿論、主人には内緒で私にだけ持ち掛けられた話でさ。散々悩んだけど、主人の為にってアイツと寝た訳よ」
吉田 瞳は前髪を掻きあげながら「最低よね」と鼻先で笑った。
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