第7話

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「え……? あ、そう……ですか」 アサ子はどう答えていいか判らなかった。 彼女はここまで話してくれたのに、アサ子は身の上を話せない。 「あ、なんかゴメンね。長々と……。こんなこと聞かされても面白くないわよね」 吉田 瞳は自嘲気味に苦笑した。 「あ、いえ、そういう訳じゃ……」 「いいの。気を遣わないで。あっ、そうだ。メガネの兄さんが帰ってきたら消毒してやってよ。良かれと思ってこれにしたけど、使い道がないのよ。あなたにあげるわ」 救急箱をくれるらしい。 「でも……」 「遠慮しないで。本当にまったく使ってないの」 アサ子は立ち上がった吉田 瞳を呼び止めた。 洞窟に置いてあった、ペットボトルの水をひとつ取った。 「これ、救急箱の代わりに貰ってください」 アサ子がそう言うと、吉田 瞳は嬉しそうに笑った。
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