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その問いに答えたのは神崎だ。
神崎は佐々木の同期で、中肉中背の佐々木とは対象的な長身スリムの男である。フレームのない眼鏡に知性を感じさせられるのは、やはり佐々木とは対象的な、落ち着いた口調に粗雑さが感じられないからだろう。
「所長の所へ、7番のご主人が乗り込んで騒いだんだ。真偽は判りかねるが、妻が免罪になったら殺されるから、妻が生還しても死刑にしてくれと話したらしい」
もちろん神崎も、何十年以上もこのゲームの監視を続けてきたことになる。
二人が眉を曇らせているのは珍しい。
今度は佐々木が答えた。
「1000万は欲しいってことだろ。どう考えても7番にゃクリアは無理なんだが、そんなことは言えねえしな。しかもイベントで妻が脱落したら、裏工作があったと思ってやるとか言い出したんだとよ」
「は……? なんですかソレ」
「めんどくせぇからコイツのプレーヤーは脱落させてやろうってことが、こっちで出来ると思ってんだろ」
「うわ……。そういう考え方がめんどくさいですね……。たまたま彼女が脱落したんだとしても、絶対に信じなさそうじゃないですか……」
「ああ。だから今回のイベントは、絶対にこっちが関わってないってのを見せる必要があるんだと。1班が喜びそうなイベントを企画されちまったよ。アイツらは極限状態に陥った人間のデータを取ってるからな」
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