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男の肌に慣れた指先が、黒川の下腹部へと滑り落ちた。
黒川はその手を払いのけた。
「悪いが、1番と兄弟にゃー、なりたかないんでね。ヤりてぇなら他を当たるんだな。こっちゃ間に合ってる」
「な、何さ、この不能ヤロー!」
叫ぶ吉田 瞳の声が、雨音に混じって響いた。
そんな吉田 瞳を木陰からじっと凝視している目があったことに、黒川も吉田 瞳も気付きはしなかった。
「アサ子さん! くく、黒川さんが、帰ってきま、きました!」
洞窟から外の様子を覗いていた篠山は、森から黒川が駆けてくるのを見て声を上げた。
雨足は随分強まっていた。吉田 瞳の足止めをくらっていた黒川は全身がずぶ濡れになっていた。
「小雨の間に戻ってくれば良かったのに」
アサ子が、ぽつりと呟いた。
「あー……、そのつもりだったんだが、7番に捕まっちまったんでねぇ」
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