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「なぜそんな事をした! 自分が何をしたか分かっているのか!?」
神崎は山田が天国島から戻ってくると、彼をひどく責め立てた。肩は怒張し、こめかみに血管が浮いていた。
彼の怒りは前代未聞の裏切りに向けられているのだと宮本は感じた。
しかし、山田はかれこれ一時間、無言を決め込んでいる。
今回は9番が自殺してしまったから開票結果を申込者に教えずに済んだこと。申込者に不正が知られてしまった場合はこちら全員が彼等の信用を失うことなど、神崎は理屈を並べ立てて山田の口を割ろうとしたが、山田はまるで世界を拒絶するかのように、かたくなに口を閉ざしていた。
一向になびかない山田に、神崎は我慢の限界を迎えていた。怒りに震えた手が山田の胸ぐらを掴んだその時、佐々木の間延びした声が響いた。
「あー…。もういいだろう」
佐々木は椅子に座りなおすと、こめかみを掻いた。
辺りに張りつめていた緊張の糸が、ふっと緩んだ。
「先輩……!?」
宮本は、思わず顔をしかめた。
もういいとはどういう事か。このまま何も分からないままで終わるつもりなのか。
そんな思いは、佐々木が密かに握っていた情報に拭われることになる。
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