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「篠山さんは9番を選ぶんじゃないかって思っただけ。でも、飛び降りるなんて思わなかったわ……」
アサ子は膝の上に顎を乗せると、数時間前のことを思い出した。
服部 司が亡くなったのは、一瞬の出来事だった。
あの時、アサ子は眩しさに目を細めながらヘリコプターを見上げていた。
様子がおかしいと思ったのだ。
高度が変わってない気がする。
そう思っていた時、そこから何かが落ちた。
人間……。
そう気付いた時には、もう全てが終わった後だった。
まるで、人形のように、物のように、垂直に落下した。
ただ、それだけだ。あっけない。
服部 司の首は、生きている人間には到底あり得ない角度を向いていた。
「俺はお嬢さんが1番を選ぶと思ってたんでねぇ。合わせたつもりが、ってヤツだな」
黒川はパタンと救急箱を閉めた。
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