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アサ子は流れていく木々の間を縫いながら砂浜を目指した。
心ばかりが急き、体が追いつかない。
足がもつれる。
「きゃっ!!」
アサ子は激しく転倒した。
「いッ……」
諦めずに立ち上がろうとしたが、震える足はそうさせてくれなかった。膝より下の部分だけが、何度も空振りしながら土を蹴った。
「逃げるなんてひどいよ」
地面に這いつくばったアサ子の頭上に声が落ちた。
「僕はね、女が嫌いなんだ。うるさいから」
アサ子に跨がった住田 和也は、死んだ魚のような目でアサ子を見下ろした。
「だけど体は好きだよ。綺麗だから。だから傷を付けたくない」
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