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住田 和也の頭の中では、母親の声が谺していたのだ。
愛してると優しく囁く母親の声。
お前は私の子供だと怒鳴る母親の声。
2つが絡みあい、自分の泣き声がそこに混じった。
掌が頬に飛んでくる。
足が腹部に飛んでくる。
泣くとうるさいと怒鳴られる。
過去の記憶は血の匂いがする。
「僕は……僕は……」
突然、住田 和也の手がアサ子の喉元を力強く捕らえた。
「……グッ!!」
アサ子はそのまま地面に倒れた。
「……離し……っ……!!」
彼の手がアサ子の細い首に食い込んだ。
みるみる内に、アサ子の顔は真っ赤になった。
塞き止められたダムのように、顔中に血液が留まった。こめかみや、鼻の頭にまで血管がぷくりと膨れ上がった。
血走る眼に、無表情の住田 和也が映った。
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