第11話

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住田 和也の頭の中では、母親の声が谺していたのだ。 愛してると優しく囁く母親の声。 お前は私の子供だと怒鳴る母親の声。 2つが絡みあい、自分の泣き声がそこに混じった。 掌が頬に飛んでくる。 足が腹部に飛んでくる。 泣くとうるさいと怒鳴られる。 過去の記憶は血の匂いがする。 「僕は……僕は……」 突然、住田 和也の手がアサ子の喉元を力強く捕らえた。 「……グッ!!」 アサ子はそのまま地面に倒れた。 「……離し……っ……!!」 彼の手がアサ子の細い首に食い込んだ。 みるみる内に、アサ子の顔は真っ赤になった。 塞き止められたダムのように、顔中に血液が留まった。こめかみや、鼻の頭にまで血管がぷくりと膨れ上がった。 血走る眼に、無表情の住田 和也が映った。
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