第11話

15/33
前へ
/33ページ
次へ
ひび割れた眼鏡が一瞬光った。 薄暗くなった山中でも、それが誰なのか一目で分かった。 篠山である。 地面に這いつくばって見上げる篠山の姿は山ほどにも大きく見え、冷たい目で住田 和也を見下ろすその姿には恐怖さえも感じるものがあった。 篠山の手には、大きな石が握られていた。人間の頭と同じくらいの大きさがある石だった。 篠山の鼻息は荒い。 アサ子はただ震えていた。 「ウぉォオオおおおッ!!」 篠山の雄叫びが響いた。 勇ましくもあり、怒りにも似た叫びだった。 石を抱えた手が、何度も振り上がり、何度も落ちた。 その都度、鈍い音が響いた。頭骨が砕ける音だ。 赤い飛沫が宙に舞った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加