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ひび割れた眼鏡が一瞬光った。
薄暗くなった山中でも、それが誰なのか一目で分かった。
篠山である。
地面に這いつくばって見上げる篠山の姿は山ほどにも大きく見え、冷たい目で住田 和也を見下ろすその姿には恐怖さえも感じるものがあった。
篠山の手には、大きな石が握られていた。人間の頭と同じくらいの大きさがある石だった。
篠山の鼻息は荒い。
アサ子はただ震えていた。
「ウぉォオオおおおッ!!」
篠山の雄叫びが響いた。
勇ましくもあり、怒りにも似た叫びだった。
石を抱えた手が、何度も振り上がり、何度も落ちた。
その都度、鈍い音が響いた。頭骨が砕ける音だ。
赤い飛沫が宙に舞った。
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