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アサ子は目を見開いたまま硬直していた。
この残酷な光景を、五感の全てで感じていた。
篠山は自殺した妹の為に、復讐の鬼と化した殺人犯。
今も、アサ子を助けた。
それは理解出来ているのに、篠山が現れなければ自分が殺されていたということも解っているのに、アサ子にはそれが受け入れられなかった。
どれだけ綺麗事を語っても、殺人は殺人なのだと身をもって知った。
ひとつの命を消しゆく様は、美しくは語れない。
目の前にいる男は、鬼なのだ。
***
19日目。
「佐々木先輩!!」
モニター室の壁にかけられた年季の入った時計が、もうすぐ正午を指そうとしていた頃、コツ、コツ、とデスクにボールペンを打ち付けていた佐々木の手が止まった。
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