第11話

4/33
前へ
/33ページ
次へ
「そういう事なんだよ。君は恐ろしい物を目撃した後に山中で迷い、自分もこのまま死ぬんじゃないかと焦った筈だ。普通の精神状態じゃなかった。まだ死にたくなかった。 脳は、運動、知覚など神経を介する情報伝達の最上位中枢で、それに感情、情緒、理性など人間の精神活動においても重要な役割を果たしている。君の脳が君を生かしたんだ。右脳が人間のイメージを作り上げ、左脳がそのイメージに知識を与えた。君は自らが作り上げたサードマンに道案内をしてもらったんだよ」 「でも私は帰り道なんて判らなかったのに……」 「君は覚えてなくても、脳は進んだ道を覚えていたってことだ」 「そんなことが……」 佐々木は腕時計に目をやった。 「話が長くなってしまったな……。どうやら彼はサードマンに出会えなかったらしい」 アサ子に向けられた腕時計は、10時を過ぎていた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加