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篠山は夕方になっても戻ってこなかった。
「篠山さん、戻ってこないわね」
「ほっとけ。ガキじゃーねぇんだからよ」
黒川は言いつつ、焚き火に木をくべた。
日が沈みかけた空は、遠く西のほうを僅かに茜色に滲ませるのみで、辺りはすっかり薄暗い。
オレンジ色の光りがパチパチと火の粉を舞い上げ、黒川の顔を照らしている。
「私、探して来るわ」
「お好きにどうぞー。タダで動くのは体力が勿体ねぇ。何か食料を調達してきてくれると嬉しいねぇ」
「言われなくてもそのつもりよ」
アサ子は海岸沿いを進みながら篠山を探した。
ずっと一緒にいたのだから、篠山の行動範囲は大体分かっているつもりだった。
しかし、砂浜や磯には篠山の姿は見当たらなかった。
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