第1章

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もうすぐ、うちの猫が死ぬ事は予感ではなく、確信だ。 このままではいずれ息が途絶えると言う確信。 過去―― 昔から私の家は動物園と言われるくらいに、動物を飼っていたことがある。 現在は犬のダックスフンドと猫、たぶん普通の日本猫だろう。 以前で言えば、ハムスターも鳩やアヒルも飼っていた。もちろん、食用としてではない。 動物と共に生きてきた家族と言ってもよい。 今回というよりも今、書き残す事は「リンク」と名づけられた猫の話である。 さて、この猫「リンク」が、この家に来た経緯は妹の子供。つまりは私の甥っ子にあた る、3兄弟の末子が捨て猫を見つけたことから物語は始まった。とここまでは、どこにで もある捨て猫の話である。と言ってもどんな人間だって、猫だって独特の物語があるだろ う。よくある話の一つだが、ちょっと話を聞いてくれると、これを書いている私も悲しさ が安らぐかもしれない。 死ぬという現実から目を逸らすために、何かを書くことで誤魔化しているといってもい いかもしれない。 実際、先ほどまで悲しみに殴打されて誰かに見られれば、一目でその目が 赤く腫れてい ることに気付くだろう。 話は戻るが甥っ子がうれしそうに片手に生後2か月くらいの子猫と言うには少し大きめ の捨て猫と、反対の手に持たれた甘栗の袋と共に、この家の敷居を跨いだ。 この時はこの猫の運命は明るい未来ではないとは誰もが思うまい。 ちなみに私の母、甥っ子から見れば、祖母にあたるのだが孫からの頼みに迷う様子もな く、わが家族に迎える事を承知したらしい。 そして、他からの反対もなく、あっさりと家族として受け入れた。普通の家では珍しい のかもしれないが動物の家族化に抵抗はなく、子供のお願いにあ っさりと陥落した。 そんな状況も知って か 知らずか、その猫は警戒する用もなく、部屋の中を甥っ子と追い かけっこをし始めた。 普通、初めてくる場所では警戒するのが動物の本能だと思うのだが、今までもここに住 んで居ましたとばかりの暴れっぷりに変わった奴だと思わずにはいられなかった。 そんな猫にでもくる儀式はある。どんな家でも動物が家族の一員となる為にやっておく べき事「名付け」であろう。もちろん、今回も例にもれず家族たちで、いろいろ案は出る。 「マロンだよ!」 甥の末っ子の言う名前に (食べ物かよ!) (クリかよ!)
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