第1章

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(さっき、こいつ栗食べてたよな……) 家族の反応は声に出なくても、そんな思いが含まれた笑いで感じ取れた。 しかし、あまい。今までも最後は私のつけた名前が最終で選ばれる事は、もはや最初から 定められた筋書きのようなものだ。 「残念。この子 の名前はリンクだよ」 なんとなく、この猫、つまりはリンクに家族を繋ぐと言う役割を与えたかったからである。 「リンク? そっか、リンクか?。じゃ、リンクおいで!」 あっさりと受け入れる甥っ子の素直さに、君自身がまるで動物のような素直さだと思った が、もち ろん口にはしないのは大人の対応であると、口元に笑みを浮かべて満足しておく。 「そう、君はリンクだ。リンク、リンクっ、リンクー!」 2,3日は名前が定着するまでは、用がなくても呼ぶことは大目に見てほしいところで ある。 問題があるとすれば、この時はリンクがオスなのかメスなのか正直わからない状態だっ た。 結果としては後々でオスと判明するのだが、オスとしては微妙なネーミングなってしま ったことだろうか。 ただ、それ以外は問題もなく家と家族に馴染んでしまったわけではあるのだが、リンク をこの家に持ってきた、 甥っ子は舐められているのか、よく追い掛け回された事はトラウ マにならなければよいだけである。たぶん。 現在―― キーボードを打つ手を止めリンクの様子を見る。 じっと私を見つめているその目は私の動作を見逃すまいと弱々しくも目を閉じる事を拒 否しており、重い呼吸音を繰り返しながらも生きる事を諦める様子は見られない。 「明日まで持つのだろうか」 部屋で一人つぶやくも返答出来る人間はおらず、私のキーボードをたたく音とリンク命の 音だけがこの空間を支配している。 「一人にはしないから見つめてなくても大丈夫だ よ」 理解したかどうかは分からないが、舌をペロリと出した事だけは見えた。 (準備はしておいた方がいいかもしれない) 今までの経験から察した事だった。 過去―― 家族に加えられて1か月経過したが、思った以上のやんちゃっぷりを見せるようになっ てくるリンクの様子にメスではないのでは? と言う思いは強まる一方だった。 「今まで何匹も飼ってきたけど、これだけの暴れん坊は初めてかもしれないわね」 母の言葉に家族全員が同意したことは、当然の結果と言える状態だった。 朝5時に起床して家の中を一人で全力
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