第1章

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疾走を繰り返し、寝ている人間が居れば、上から お腹を踏んで飛び越えていく。 思わず「うっ!」との声を発する共に家族は起こされるわけである。 それも仕方がない事で食べる量が尋常ではなく、この家に来て1か月、生後3か月程度 で4キロを超える成長を見せたのである。 みなさん考えてみてほしい。4キロの砲丸が寝ている状態でお腹に落とされる感覚を。 当然―― 「こらー!」 となるわけである。 もちろん、これだけに留まるわけもなく、猫を飼っていればどこの家でも恒例の障子や ぶりに始まり、襖すらも穴を開けてしまう 始末。 「これでメスなら、とんでもないおてんば娘だ」 とは悪戯をされた時の家族の決まり文句だった。 これは後でオスだと分かった時にリンクにとっては失礼だったかもしれないが、体の成 長が早い割にかなり性器がかなり小さく、どう見てもメスにしか見えなかったのである。 リンクには事情を察してもらいたいものである。 ただ、オンとオフのスイッチが激しいところがあり、疲れると爆睡する。 一日に20時間寝るところは他の猫と変わらないが、寝るときはイビキをかき、寝言も 言う。 更にひどい時は目を開けて白目で寝てい るときもしばしば……。 家族にとっては人が寝てると邪魔をするくせに、自分が寝る時は一切の遠慮も警戒もな い姿に、悪戯心を擽られることは仕方がないと私も賛成票を投じるしかない。 (リンク、君が悪いのだ。安心して寝させはしないよ) こうして毎日の応酬戦が繰り広げられた。 我が家の家族に迎えられて2か月がたつ頃だった。体重が5キロを超えたのだ。 人間の赤ちゃんの生後3か月くらいに並んだ事に笑いしか出ない成長は留まる事を知ら ず、これは10キロとか超えるスピードじゃないかな? と母と話題になったことがあっ た。 ちなみに我が家ではミニチュアダックスフンドという、訳ありな黒い物体もいたりする のだが、今回は猫が主役であるのだから、出番は待ってもらうしかない。辛抱していても らおう。 その黒い物体と並んだ姿は変わらないくらいの大きさに、犬が猫のリンクに遠慮と警戒 気味である。 ただし、その遠慮が災いして か黒い物体君の餌まで手を出しており、ますますその成長 が加速していく の だった。 気が付いた時にはリンクの体重は6キロを超えていて10キロが見えてきたんじゃない かと母と本気で心配したものだった。
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