第1章

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こちらは実際、 心配要素としては明るい方で、外の世界の興味を持ち始めたことの方が 心配の種となっていた。と言うのも、私が学生時代の自宅が動物園と言われていた頃だっ ただろうか? それを友達も近所も納得する程に、猫も犬も鳥も飼っていたことがある。 そして同時に、それだけの死を見てきた事でもある。 我が家の動物の長い眠りつく経過は、多く見られる病死や衰弱死が圧倒的に少ないので ある。 特に犬と違い繋がれていない猫は外への興味を断つ事は非常に難しく、いつか外の世界 を知ってしまうのだ。 これは人間も同じことを言えるかもしれ ない。親の元を離れて外の世界に飛び出す……。 だからこそ、狭い家の中だけで満足させる事が出来るはずもない。 結果、頻繁に外に出るようになる。 そこに追加条件として、我が家の前の道路は田舎道にも関わらず、高速道路ですら可愛 く見えるほどのスピードで走る車が多かった。 実際、8割くらいがその餌食となって家族を悲しませるのだった。 母は危険だからと閉じ込めておくのは可愛そうだと、外に出る事を無理をしてまで抑え る事はしなかったが、子供をお腹に抱えた妊婦のままで死んだ猫がおり、現在では外に極 力出さないよう にしていたのだ。 「外に出る事を覚えなければいいけど……」 母の口から出た心配の言葉は当然、私も同意見だった。 現在―― リンクの様子は悪化をたどる一方だった。 私を見る目は閉じられる事はなかったが、明らかに光を失い始めており、もう見えてい るかも定かではない。 息は深くなり、口での呼吸に変わっていっているのだ。投げ出された腕には力が見られ ず、呼吸音が悲しげな、別れの言葉に聞こえたのは錯覚とは思えなかった。 (思っている以上に早いかもしれない……) まだ太陽が昇るには早い時間だが母を起 こす為、母の寝室に向かったのだった。 過去―― 半年が経ち、心配した10キロに届く事もなく、何とか6キロで成長も安定してきた様 子にある意味、残念な気持ちも少々持ちながらも十分立派な姿に呆れの方が大きかった。 この 頃になると、もう一つの心配していたオスなのかメスなのかの判断は 判断の付く程 度にはなっており、やはりオスである事に家族からは納得の声しか聞こえなかった。 ただ、心配していた外への興味は増すばかりの様でキッチンの窓から、外の世界を眺め る事が増えたように思えた。
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