狩猟友は恋の夢を見られるか?

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「そっちに向かったぞ! 足止めしろ!」 猪のような魔物が、奈美に向かって突進する。 奈美は生身で魔物を罠のある場所に誘導し、必死に自分の足で駆けた。 風よりも速い魔物の身体…篳篥を降ろしていなければ身体がついていかなかった。 「…っ!」 ぶぉぉん、ぶぉぉん! 魔物は罠にかかり、悲鳴をあげながらそのまま信久の夕食になる。 生々しい光景だがもうだいぶ慣れた。 強者が敗者を喰らう姿…奈美が欲しながら、忌み嫌ってきたもの。 大切にしたために、失ってしまったもの。 「奈美、いつもありがとう。」 穏やかに奈美に微笑みかける信久は、今しがたまで魔物を追い詰めて仕留めた男だとは思いたくない。 今までよくこんな生き物とつきあえたものだ…普通の女の子なら警察に通報している。 奈美は今でこそ大人しいが、昔はかなり我が強かった。 大切なものを守りたいと、多くのものを踏みにじった。 たかがプリン、たかがケーキ。 そんなもののために戦わねばならなかった…彼らを永遠にするために。 だから周りに嫌われ孤立したのだが、このみや風音と信久だけは違った…奈美の過去までも受け入れてくれた。 だから、彼らを支えたいと思った…何があったとしても。 基本的に奈美は譲らない性格であるが、彼らには譲っても良いと最近考えるようになった。 嫌われたくないからかもしれないし、彼らの見ているものも知りたいと思うから。 他人への興味は珍しい。 奈美も少しずつ変化したのかもしれない。 「こちらこそ、狩猟友が出来て嬉しいよ。 こんなのは普通誰にも理解されないからさ。」 本人も自覚している。
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