狩猟友は恋の夢を見られるか?

3/4
前へ
/115ページ
次へ
(まさか私も、こんな男の貰い手がいるとは思わなかったぞ。 戦いにしか居場所が無いような奴だからな。) 二人の会話に割って入る篳篥。 表に出なかったから聞こえるのは奈美だけにだけど。 (いや、貰い手とは早すぎますが。) ドキッ…! そう照れ隠しに口にしても、心臓の音が止まらない。 (早すぎるとは、いつか貰うわけだな。) しまった、墓穴を掘った! 完全に早とちりだが奈美は赤面した。 「奈美?」 さすがに信久も奈美の様子がおかしいことに気づく。 「まさか、篳篥様が奈美に余計なことを…!」 ざわざわと髪の毛と瞳の色が変わる。 『蜜のためだ、気にするな。』 人間の前向きな感情は、篳篥の福を呼ぶための蜜のチカラになる。 奈美は照れながらも甘い蜜を出していた。 「蜜なんか巫女から絞らんでも周りから取れるだろ!」 朱夏は奈美から何かを貪るのは許せない。 彼もまた奈美から求めているから。 『お前のせいでいつも怨念が混ざるだろうが。』 勝つ人間の下で負ける人間がいる。 負ける人間は怨念を流す。 篳篥は憂いていた…すべての人間が奈美たちみたいに強くないと知っている。 だから、本来は蜜が少ない…たくさんの福を与える事が出来ない。 『お前は戦いだけが居場所…こんな陰険な平和な下では生きられない。 なぜ、地上に降りた?』 「神は必要以上に人間に干渉しない。 戦えるのに戦わんのが気に入らんからだ。」 それだけでもないのだが、それも本心だった。 『…お前らしいな。』 裏の真意も組んで篳篥は笑う。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加