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(まさか私も、こんな男の貰い手がいるとは思わなかったぞ。
戦いにしか居場所が無いような奴だからな。)
二人の会話に割って入る篳篥。
表に出なかったから聞こえるのは奈美だけにだけど。
(いや、貰い手とは早すぎますが。)
ドキッ…!
そう照れ隠しに口にしても、心臓の音が止まらない。
(早すぎるとは、いつか貰うわけだな。)
しまった、墓穴を掘った!
完全に早とちりだが奈美は赤面した。
「奈美?」
さすがに信久も奈美の様子がおかしいことに気づく。
「まさか、篳篥様が奈美に余計なことを…!」
ざわざわと髪の毛と瞳の色が変わる。
『蜜のためだ、気にするな。』
人間の前向きな感情は、篳篥の福を呼ぶための蜜のチカラになる。
奈美は照れながらも甘い蜜を出していた。
「蜜なんか巫女から絞らんでも周りから取れるだろ!」
朱夏は奈美から何かを貪るのは許せない。
彼もまた奈美から求めているから。
『お前のせいでいつも怨念が混ざるだろうが。』
勝つ人間の下で負ける人間がいる。
負ける人間は怨念を流す。
篳篥は憂いていた…すべての人間が奈美たちみたいに強くないと知っている。
だから、本来は蜜が少ない…たくさんの福を与える事が出来ない。
『お前は戦いだけが居場所…こんな陰険な平和な下では生きられない。
なぜ、地上に降りた?』
「神は必要以上に人間に干渉しない。
戦えるのに戦わんのが気に入らんからだ。」
それだけでもないのだが、それも本心だった。
『…お前らしいな。』
裏の真意も組んで篳篥は笑う。
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