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「だったら、奈美から離れろ。
彼女を守る以外は余計な口出しは許さん。」
奈美を狩猟に駆り出して他人に守らせ、しまいにはこの態度…とんでもない暴言だった。
本来なら許さんのだが、なかなか見つからない野獣の調教役を手放すのも野暮だった。
『…言うな、若造が。』
捨てセリフを残して去る篳篥。
「ありがとう、朱夏くん。」
奈美には聞こえていたらしく…何だか嬉しそうだった。
「せっかく見つけた狩猟友だからな。
お前がいたら、もっと狩れそうだからさ。」
色恋の気配は全くない。
残念だったが、奈美はこんな男だと諦めていた。
ベタベタすることを望んでいたわけでもないし。
「じゃあ、どこかで仕留めたお肉を焼こうか。」
奈美は気持ちを切り替えて普通の会話に戻る。
「じゃあ、うちに来るか?
たまには広い場所で思い切り食いたいからさ。」
猪はかなりの大物だった…奈美の家には入りきらないかもしれない。
…でも。
「し、朱夏くんの家?
そんな匂いがするお肉持ち込んでいいの?
それに私が…!」
奈美は困ってしまう。
「奈美に会うまでどこで肉を焼いたと思っているんだよ?
風音の家が大半だがいつも空いてるとは限らんからな。」
よくバレなかったな…奈美は疑問に思った。
「ついでに甘いものも用意するからさ…なっ?」
朱夏が奈美に強く迫る。
珍しい光景だ…何を思ったか知らないが。
「う、うん。」
ついに奈美が折れた。
「やった!
食い仲間が出来たな!」
やっぱり、こいつはこんな男だ…悔しい反面嬉しくもあった。
彼には、いつも彼でいて欲しいから。
いつも戦いに気高く…自らの道を切り開いていく彼に。
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