教え子

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「創柳様にはたくさんのことを教わりました。 チカラの使い方…敵との戦い方…。」 ほら、半分は忘れてやがる。 俺はお前ら兄妹を戦闘機械にしたいわけじゃないんだぞ? 子供って、どうして親の思惑通りに育たないのか…ちょっと寂しい。 親の心…子知らずといえる。 数百年生きてこれだぞ? 「…だから、他にも覚えることはたくさんあるだろ。」 知らず知らずに、気がつけば創柳はあやめにすっかり親心がついてしまっていた。 いずれ親バカと言われる日も遠くないだろう。 「とにかく、今回の一件が終わったらお前はたまにでいいから少し休め。 今お前が倒れたら、代わりがいなくなる。」 代わりが現れるかは疑問だが。 「創柳様…私はそんなに簡単に倒れませんよ。」 心配してくれるのが嬉しくて。 つい、顔がほころんでしまう。 普段、あまり本気で優しさを見せなくとも…私はそんなあなたをお慕いしています。 口には出さなくても…表情には出てしまう。 「あなたのためならどこまでも頑張れますから。」 満面の笑み。 全く、毒気が無いからやりにくいな。 創柳はため息混じりに腹をくくる。 「だから、そうじゃないだろうが!」 …ぎゅっ、ときつく教え子を抱きしめた。 「そ、創柳様!」 どぎまぎするあやめ。 まさか、抱きしめられるとは思っていなかったから。 「失いたくないんだ…お前たちを。」 小さく呟く創柳。 お前を拾ったあの日から。 お前を手塩にかけて育てた日々は。 俺は変わった。 戦に汚れた俺を…お前たち兄妹が清めてくれた。 だから、無くしたくない。 愛している。
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