1088人が本棚に入れています
本棚に追加
その途中で心配になったのかひかるもやって来た。
女はひかるを見るなり小さく笑った。
「いい男が越してきたと思ったら、女連れ?なーんだ、がっかり」
「すみません、越して来たのは俺じゃなくて、彼女なんです」
俺がひかるに視線をやると、ひかるが横から挨拶をした。
「これから隣でお世話になる森野です。よろしくお願いします」
「よろしくすることは何もないけど、まあよろしくね。あ、脚立よね?脚立なんて物は置いてないけど、あ、椅子でもいい?台になればいいんでしょ?」
女は適当に挨拶をすると、玄関の奥へ入って行った。
玄関から見える範囲の部屋の中は、随分と散らかっていた。
そして女が安物の丸椅子を持ってやって来た。
「これでいい?」
「はい。ありがとうございます」
俺がそれを受け取るとひかるもお礼を言った。
「あ、使ったら外に置いといてもらっていいから。まあ、頑張って」
女はそう言ってドアを閉めた。
最初のコメントを投稿しよう!