遠回り

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「ひかる…大丈夫か?」 私はあっくんの腕の中で深く息を吸い込んだ。 自分の意志とは別に、乱れだした感情に呼吸が浅くなって苦しかった。 悪いのは私の方なのに、あっくんは自分が酷いことをしたかのように肩を落として背中を丸めていた。 「…言い方…悪かったな。…食欲みたいだって言ったのは…人にとっては…それくらい自然なことだってこと。…本当に…自然に欲しくなるんだよ。ひかるに何があったのかは聞かねえけど、ひかるにいつかちゃんと惚れた男が出来たら、少しはわかってもらえるかもしれねえな」 私はあっくんの話に返事もできずに黙って聞いていた。 あの時の私は… 彼を…欲しいなんて思っていたんだろうか。 確かに彼のことは好きだったけれど… 彼に嫌われたくなくて 恥ずかしいと思ったことも…無理してしてた… 彼だって何度も『ひかるが欲しい』とは言ってたけれど… 今となっては嘘にしか思えなかった。 【欲しいもの】を手に入れた後の彼は それに興味を示さなかった。 だから、私は… 行為の後に残る虚しさも 初めての彼から教えられたのだ。
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