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その朝、アラームが鳴ったにも関わらず、
俺とひかるはほんの少し寝坊をした。
ひかるが慌てて作った朝食がなんだか妙にうれしくて
いつの間にかアイロン掛けされたシワのないシャツを着てネクタイを締めた。
「わ、あっくんカッコイイ」
「…当たり前だろ」
冗談を言いながらひかるに背を向けて口元を緩ませる。
早い時間から不動産取引に立ち会うので、早目に出なければならない。
朝の短い時間でひかると引っ越しの日程などを再度確認して、玄関に向かった。
「何かあったらすぐに電話しろ。秀子さんと親父さんによろしく」
「あっくん、いろいろとありがとう」
「ん。気を付けて帰れよ」
「うん、ありがと」
その後、数秒間、視線だけが通う。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
俺はひかるに送られて玄関を出た。
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