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「…ひかる?」
不意に脱衣所からあっくんのくぐもった声が聞こえた。
頭がぼんやりしていてすぐに返事が出来なかったので、擦りガラスの向こうであっくんが声のボリュームを上げた。
「ひかる、大丈夫か?」
「…あっくん…?」
私は返事をしながらお湯の中でカラダを起す。
ガラスのすぐ向こうにあっくんの黒い影が見えた。
「あ、ああ…大丈夫ならいいんだ」
あっくんはホッとしたように言った。
「あんまりなげーから溺れたのかと思ったぜ」
「…お風呂で…溺れたり…しない…よ…」
言いながら視界が揺れる。
…ア…レ…?
…アレ……
「溺れんだろ。ガキの頃――――」
あっくんの声が遠退(トオノ)く。
「ひかる―――」
名前を…
呼ばれたような気がした…
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