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結局、私は何も口にしないまま、理香との時間も早目に切り上げてロッカールームに戻った。
「あ…、お疲れさまです」
田部さんが小さな鏡で唇だけの化粧直しをしていた。
彼女は鏡から私の顔に視線を移して、鏡とルージュをポーチに仕舞ってロッカーのドアを閉じた。
「そっちがお疲れみたいね」
田部さんはロッカーを背にして腕を組んだ。
「…青木くんね?」
私は返事の代わりに小さくため息を漏らして田部さんを見つめた。
「…彼、最近は大人しかったんだけどねぇ」
「…え?」
「彼のことは気にしちゃダメよ。放っておけばそのうち熱も冷めるから」
「…放って…おけば…?」
「そう。新しい子見つけるといつもこうなの。すぐにちょっかい出して…すぐに飽きる。ああ、ほら、アレ」
「…アレ?」
「女を抱いた数で男の値打ちが決まると思ってる、イタイ男」
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