第一ボタン

32/35
前へ
/36ページ
次へ
「大丈夫か?」 あっくんは私の顔を覗き込んで言った。 その視線は私と目を合せた後、唇を見つめる。 「…大丈夫」 私は何度も頷きながらあっくんの目を見つめ直した。 「…よかった」 あっくんはホッとしたように息を吐き出した。 そして、私を自分の背中に隠すと、優しかった目の色を変えて青木さんと向き合った。 「いつも森野がお世話になっています。随分と酔ってらっしゃるようですが、階段、気を付けてお戻りください」 あっくんは階段に視線をやった。 あっくんの目が青木さんに早く戻れと言っている。 初めて見る… …あっくんの冷たい視線だった。 すると、青木さんもあっくんと同じ目つきでそれに答えた。 「こちらこそ、ひかるちゃんにはお世話になっていますよ。まあ…お世話してるんですけど。一日中ずっと一緒にいて…手取り足取り教えるのが僕の仕事ですから」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1164人が本棚に入れています
本棚に追加