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二人で田部さんのアパートへ向かった。
「本当は恥ずかしくて…人に見せられたものじゃないんだけど…恥を忍んで…お願いするわね」
田部さんはアパートの階段を上り、玄関のドアの前で改まって言った。
そして鍵穴に鍵を差し込み、ドアノブに手を掛ける。
その手に力がこもっていた。
彼女はドアノブを持ったまま私を見た。
「…私にも…出来るわよね?」
いつも余裕たっぷりの顔いっぱいに不安を滲ませていた。
これが単なる部屋の掃除ではないことは私にもわかってる。
…少しずつでもいい…
田部さんの心が…少しずつ…軽くなれば…
「…大丈夫ですよ。…少しずつ…始めましょう」
私の言葉に彼女は小さく頷き、
ドアノブをゆっくりと回した。
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