秘められた想い

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ゴミや雑誌でいっぱいだったテーブルはすっきりと片付けられ、 田部さんはそこにケーキと紅茶を準備してくれた。 「自分の家じゃないみたい」 田部さんはそう言って私に座るように促した。 「あ…これって…」 「どうしたの?」 「これって…あの時の丸椅子ですか?」 私が座ろうとしたイスは あの時あっくんと二人で借りた見覚えのある丸椅子。 「ああ、そうそう、あの時の」 田部さんが笑ったので私もつられて笑った。 そして自分も私の向かいの形の違う背もたれのある椅子に座った。 そして、クスクス笑う顔を 静かな微笑みに変えた。 「元々、これ一つしかなかったんだけど…」 田部さんは自分の座っているイスを示した。 「…青木くんと付き合うことになって、彼がこの家に来るようになって…買い足したの」
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