秘められた想い

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田部さんのアパートを出るとき 彼女はもう一度私に「ありがとう」とお礼を言った。 一日にこんなにもその言葉を聞けたのは、 もしかしたら…初めてかもしれない。 自分が誰かの役に立てたようで… とてもうれしかった。 こんな時は無性にあっくんに話したくなる。 あっくんが…聞き上手だからかもしれない。 私は軽い足取りですぐ近くのコンビニへ向かった。 あっくんは外で夕食を済ませて来るので、今日食べれなくなってしまってもいいように、私が選んだデザートは高級アイスクリームだった。 コンビニの小さなビニール袋を提(サ)げてマンションに帰る。 辺りはもう真っ暗で、先程食べたケーキが夕飯代わりでもいいくらいだった。 「…ただいま…」 呟いてみるけど、もちろん返事はない。 アイスを冷凍庫に仕舞って、そのまま洗濯物を入れるためにベランダに足を向けた。
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