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その日は私が実家に帰る前日だった。
あっくんは仕事で私から一日遅れてわずかに二泊出来るだけだという。
「仕事もあるし、二泊もすればお袋も満足するだろ」
というのがあっくんの言い分。
忙しくても…やっぱり節子おばさんのことは考えてるんだ。
私もあっくんに合せてもう少しマンションで過ごそうかと思ったけれど、あっくんが許さない。
「一カ月間頑張ったんだ、胸張って帰って、秀子さんと親父さんに元気な顔見せてやれよ」
優しいあっくんの言葉に甘えて私は実家でのんびりするとして、帰省の前にあっくんの食事を作り溜めでもしようとキッチンに立っていた。
あっくんは奥のデスクで仕事をしている。
5月のはじめ。
窓を開ければ随分と温かくなった穏やかな風がそよそよと遊びに来る。
そんな風がお客さんを連れて来たのか、インターホンが部屋に響いた。
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