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「…っとに…そんなに飲んで大丈夫か?」
あっくんは私のすぐ横に立ちながら、呆れたように言った。
だけど、私が飲んだ理由は聞いてこない。
『どうしてそんなに飲んだんだ』って……
普通なら聞くところだ。
「…迎え…ごめんね」
私はそう言いながらゆっくりと歩き出した。
田部さんの部屋はアパートの二階。
私は階段に掛かると、手摺(テスリ)を掴んで慎重に一歩踏み出した。
一段…二段…
パンプスのかかとが鈍い音を立てて私の後からついてくるみたいだった。
階段の半分より下まで来ると、私は手摺から手を離した。
けれど、それが…悪かった。
手を離した直後の一段を、
私はものの見事に踏み外した。
「きゃあ」
慌てて伸ばした私の手は手摺には届かず…
代わりにあっくんが…
…抱きしめてくれた。
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