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「……暁人……」
玄関からは彼女があっくんを呼ぶ声が聞こえた。
……暁人。
私には馴染みのないあっくんの呼び方。
玄関からダイニングまで
二人がどんな会話をしているのか、
気になるようで、少しも聞きたくはなかった。
「こんにちは。えっと……」
ダイニングのドアをくぐるなり、彼女は私に明るい挨拶をした。
だけど、私の名前を探している。
私はこの時、今更ながらに気が付いた。
前回、彼女が来た時には、私は自分の名前すら彼女に教えていなかったのだと。
つまり……
彼女も聞かなかった。
私の名前など、彼女にはどうでもいいことだったのだ。
私がぼんやりするので代わりにあっくんが彼女に言った。
「ひかるだよ。森野ひかる。今は彼女と一緒にここに住んでる」
あっくんはこの時……
『幼馴染の』とは……
……言わなかった。
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