二人の夢

2/36
1143人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「……暁人……」 玄関からは彼女があっくんを呼ぶ声が聞こえた。 ……暁人。 私には馴染みのないあっくんの呼び方。 玄関からダイニングまで 二人がどんな会話をしているのか、 気になるようで、少しも聞きたくはなかった。 「こんにちは。えっと……」 ダイニングのドアをくぐるなり、彼女は私に明るい挨拶をした。 だけど、私の名前を探している。 私はこの時、今更ながらに気が付いた。 前回、彼女が来た時には、私は自分の名前すら彼女に教えていなかったのだと。 つまり…… 彼女も聞かなかった。 私の名前など、彼女にはどうでもいいことだったのだ。 私がぼんやりするので代わりにあっくんが彼女に言った。 「ひかるだよ。森野ひかる。今は彼女と一緒にここに住んでる」 あっくんはこの時…… 『幼馴染の』とは…… ……言わなかった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!