夜更し(ヨフカシ)

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「……怖くなかったか?」 静まった部屋であっくんが私の頬を撫でながら言った。 「……怖がってるように見えた……?」 まだ完全に呼吸が整っていない。 私は囁くように返事をした。 あっくんは目じりを下げて微笑むと、私の鼻に自分の鼻の頭を小さくこする。 「……全然……」 そして、白い歯を見せた。 自分でも不思議なくらい 辛い過去の幻影は 少しも目の前も、脳裏さえもかすめなかった。 もっと、あの時の感覚が蘇ってくるものだと思って覚悟もしていたのに…… 私にはそんな余裕もないほどに 心も……カラダも…… 全部があっくんに埋め尽くされていた。 だから、全く…… ……怖くなんて……なかったよ……
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