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力なく八雲さんのシャツを掴んで身体をあずける。
八雲さんは僕の背中に軽く手を置いて、あやすように1回だけ撫でた。
「や、くも、さん…ッ、これ、」
息が続かない。
浅い呼吸を繰り返しながら、小さな声を出すので精一杯だ。
「ん?」
出してほしい。
けど、それじゃだめだって分かってるから何も言えない。
「…っ、なんでもない、です…っ」
涙でぼやけた視界に映る八雲さんは優しい表情に見えて、とても4歳差しかない人だとは思えなかった。
仕事だと割り切ってるからできる顔なのか、僕に何かしらの同情心を抱いているのか。
分からないけど、この人だって辛いということは痛いほど感じた。
「…ありがとうございました」
およそ5分ほどの、自分にとってはとても長い時間が終わって、八雲さんにお礼を言う。
八雲さんは苦笑しながら僕の頭を撫でた。
「初めてだから…大変なのは分かるよ。頑張ってね」
「はい…!」
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