第1章

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「だって、実際そこまで悪い人には思えなかったんだもん。アンダーさんだって、そういう人が悪し様に言われてたらフォローくらいするでしょ?」 「そうですね。なんといっても見惚れるほどのイケメンですし」 「もう、だから違うってば!」  私は御堂島が好きなのか?  自問して、即否定できない自分に気づく。私を殺すといった人のことを好きになるなんて、生物としてどうかしている。だけど、彼を思い出すたびにキュンとしてしまうのも事実だ。お前と寝る、と言われたのに結局ホテルに泊まったのだって、心のどこかでそうなってもいいと思っていたからかも知れない。怪我してるから、なんて理由は自分への言い訳だ。 「御堂島優琉って、実際にはどんな感じでした? 僕、結局話す機会がなくって」  アンダーさんの興味が逸れ、これ幸いと話に乗る。そう言えば、彼は御堂島ととても話したがってたんだった。 「すごく仕事が出来そうな感じだったよ。服は当然だろうけど、身だしなみとか振る舞いまで完璧って言うか」 「へえ……なんか、機械みたいですね」 「でも、クールに見えたけど仕事に対しては熱意があったよ。あとは、考え方とかかなりオトナな感じ。私と一歳しか離れてないなんて思えない」 「それ、単に平沢さんが幼いだけでは?」 「ブースじゅうにガンダム並べてる人が言えるセリフ?」 「ガンダムは奥が深いんですよ!」  そして話は脱線し、完全に仕事関係なしの雑談が続いた。アンダーさんも仕事をしたくないというのが本音なのだろう。  それにしても、彩とアンダーさんの話を聞きたかったのに、何も進展がなかったのは残念だ。しかしそれは本人たちの問題で、これ以上私がどうこうする問題ではない。 「‐‐さて、じゃあそろそろ仕事に戻るかな。CRのカラバリ、修正あったらまた言ってね」 「分かりました。色数だけ絞って、枠の表面処理はこのままで行くと思いますけど」  じゃあね、と手を振って背を向ける。彼のおかげでリフレッシュできたしまた仕事頑張るか、と一歩を踏み出した途端、アンダーさんがまた口を開いた。 「あっ、平沢さん、それ」  振り向くと、さっきまでニコニコしていた彼が心配そうに私を見ている。 「スカートのお尻、汚れちゃってますよ。転んだんですか?」 「あ、これ? 来る途中漏らしちゃった」  笑いながら言うと、アンダーさんはため息をついた。
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