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……本当に、彼は何を言ってるんだろう。これじゃまるで告白だ。けれど拓海君は彩が好きなはずで、でも彩にはなんのアクションも起こしてなくて……。
あれ?
「……今日のアンダーさん、変だよ」
結局、私はそう呟いた。名前で呼べと言ったり、好きだと言ったり。私よりもよっぽど可愛くて、なのにこんなに格好良く見えるなんて。
「誰のせいですか」
握られた手が、後ろのロッカーに押し付けられる。体がバランスを崩し、背中がロッカーにぶつかった。階段で落ちたときの打撲跡が痛み、思わず顔をしかめる。スチールがひんやりと服越しの体を冷やすのに、頭はオーバーヒートを起こしていた。
「しばらくは隠しておくつもりだったのに」
私より少しだけ高くにある顔が、熱っぽく歪む。手は痛むほどに握られて、それでも彼から目を逸らせずにいた。
「それなのに作戦を変更しなきゃいけなくなったのは、誰のせいです?」
繊細な作りの顔立ちは少女のようだが、それと重なるように男の部分も見え隠れする。美しいからこそ、歪められ刻まれた顔の皺が妙にセクシーだった。
「あなたが気づいてくれてたら……うっすらとでも少しずつ僕の気持ちを感じ取ってくれたら、僕は、まだ言わずに済んだのに」
彼が左手をロッカーにつき、私は逃げ場を失う。互の身体を隔てる空間は徐々に狭められ、耐え切れずに顔を背けた。
「や……やめ……」
打ち合わせでのあの出来事が脳裏をよぎった。御堂島からの、突然のキス。彼に操を立てるわけではないし、そもそも付き合ってさえいないのに、なぜか私は罪悪感を感じていた。
どうしたんだろう。私も、拓海君も、二人しておかしくなってる。
するりと右手が解放され、彼が私の腰に手を回す。ぎゅっ、と音がしそうなくらい抱きすくめられ、身体のあちこちが軋むように痛んだ。
「痛っ……」
つい背を反らせて顔を上げると、彼も頭を起こした。鼻と鼻が触れ合うほどの距離。苦しげに細められた彼の目には、狂おしい光が宿っている。官能を掻き立てるような、怪しくも美しい色。
「……っ!」
目を離せないでいる隙をついて、彼の唇が私に重なった。まるで女の子のような柔らかさが、快楽を孕んだ背徳感を感じさせる。
せめてもの抵抗でぎゅっと唇を閉じる。すると彼は、しなやかな舌先でその割れ目を舐めた。ぞくりとした快感に貫かれて、思わず声が漏れる。
「ん……っ」
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