指輪を落とした男。

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「ねえ、ちょっと……」  カノジョがスプーンを見せてきた。その柄を見て、硬直する。  そこにあったのは、無くしたはずの指輪だった。  顔を上げれば、佐々木が片目をつぶった。  彼の声が聞こえた気がした。 「いいサプライズだろ」と。  僕は思った。  趣味の悪いサプライズだ。 「あ、なあ、炭酸ねえ?」  指輪もうけとってもらい、アイスも食べ終わった頃。佐々木が絡んでいた男が店員に言った。 「お前の分はない。自販で買ってこい」 「小銭くれ」  不思議なのだが僕はなぜかその時、そうしなければいけないような気がし、彼にポケットにあったそれを差し出していた。 「良ければ、どうぞ」 「ああ……。どうも」  彼が受け取った瞬間、店員が吹きだした。 終わり
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