指輪を拾った男。

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「……てことは、無くなったんですか? 指輪」 「そうなんですよ。誰かが拾ってくれると良いんですけど」  いや、拾ってる。ついでにいうと、あんたの目の前の店員が持ってる。 「大変でしたね」  テーブルを拭き、カウンターに戻った友人が白々しく言う。  彼はおれの隣に来ると、声を潜めて言った。 「ほら、面白いだろ」  友達選びは重要だ。そう思った。  ついでに、落とし物は拾われる相手を選ぶべきだと思う。  着々とパーティーの準備は進んでいく。  因みに、部外者のおれは。 「ソイツ、今日失恋して潰れてるんです。居ないものだと思ってください」  という、友人の要らないフォローでその場に留まることになった  友人選びは重要だと思う。  そろそろ解放して欲しいのだが。  しかし、彼はどうするつもりなのか。  ふと顔を上げると、友人と目が合う。  彼はニヤリと笑い、カウンターからでた。  その手に持っているモノを見て、ため息を吐き、伏せたまま耳をふさいだ。 「デザートの相談なのですが、雪だるま型のアイスでどうでしょう?」  友人の提案に、彼らは爆笑する。 「店長さん、それきついっすよ!」 「そうですか、ね。因みにスプーンはこれ」  友人は微笑み、手に持ったスプーンを振った。ハズだ。  塞いでても分かった。爆笑が絶叫に変わった。  おれには、彼の心の声が聞こえた。 「今日はサプライズ祭りだ!!」と。  最悪だ。
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