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僕はサプライズで指輪を渡す予定だった。
友人に頼んで、雪の中に隠してもらった。
それで、ベンチで雪だるまを作って、そこから指輪を取り出す手はずだった。
が、いざ作るとそこには何もなかった。
100円玉以外。
本人は忘れているようだが、最初に提案したのは佐々木だ。その場ではそれが良案だと思った。
ただ、そうなった瞬間思った。
成功するはずないさ、と。
気付くのが遅かったのだ。早めに気付くべきだった。
現在、僕は喫茶店でパーティーをしている。もう終盤だ。
何を隠そう、今日はカノジョの誕生日なのだ。
なぜか、友人たちは楽しそうに笑っている。
そりゃ、そうか。誕生日だ。何が失敗しようが、笑顔で居るのは当たり前だ。
そんなわけで、僕も笑っている。
そういえば、本来気にすることではないのだが、貸し切りと聞いたのに1人多い。
気になった理由は、佐々木が進んで絡んでいっているということにある。
時折、そいつに深々と頭を下げている。
酔っているらしい、めでたいやつである。
僕は「お前覚えてろよ」と、佐々木の背中を一睨みする。
「雪だるまアイスです」
声にはっとし、そちらをみる。
にこやかに微笑む店員が、透明な皿を持ってきた。どうやらデザートらしい。
カノジョの前にそれが置かれる。
顔の描かれた、かなりクオリティのたかい雪だるまだ。
雪だるまアイスって、嫌みか。
顔の筋肉がひきつる。
友人たちのにやけ顔が、気持ち悪い。
友人は選ぶべきだと思う。
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