こころ

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神谷との出会いは小学四年生。 「広島から来た神谷 夕騎(かみたに ゆうき)です」 「神崎(かんざき)、お前の横入れたれ」 担任に言われて横の席に案内をした。 「神崎 真(かんざき まこと)よろしくな」 それだけ言って前を向く。 これがうちとあいつの出会い。 「なーなー、神谷広島ってどんなとこ?」 「うちらと喋り方ちょっとちゃうよねー」 休み時間になると神谷の周りは人だかりが出来た。 そんなに興味もなかったし、人見知りなうちはそそくさと図書室に逃げたっけ。 なんで仲良くなったかっていうと 「あ、消しゴムない」 この一言から始まった。 「忘れたん?貸したろ」 当時流行ってたキャラクターデザインの消しゴムを貸してあげた。 ハムスターの形やったり、猫の形やったり色々あるけど、その日は確か犬。 「真、犬すきなん?」 って聞かれて、授業中やったのにもかかわらず家で飼ってる犬の話をして盛り上がった。 それから次の休み時間になって男子が神谷をドッジボールに誘った。 「神谷!ドッジしよに!」 「ええで!真も行くやろ?」 ドキッとした。 誘われるなんて思ってなかったから。 しかも、運動苦手やったから。 「うちはええわ、運動苦手やから」 そう言って本を読み出した。 「えー、ほな俺も今日はええわー」 その言葉で読んでいた本を閉じた。 「え、行っておいでよ」 ビックリしながら男子を見ると 「なんやー、神谷やらんてー」 と言って走り去っていった。 「ええの?行ってもうたで?」 「ええわ、俺今日は真と遊びたい気分」 そう言って席に座ってじっと見てくる神谷。 「遊ぶって、うち運動出来やんし本読んどるだけやで」 戸惑いながら言うと 「ええよ、何の本読んどんの」 「ファンタジー小説やけど……」 「どんなんなん?」 それから神谷は、小学生には貴重な長い昼休みのはずやのにうちの話す小説の内容をひたすら聞くだけやった。
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