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case:神谷信二氏
神谷信二は悩んでいた。
「でも気になるしなあ。食べんで良いから食べてる人の見物させてくれ言うて覗こうかなあ」
ブツブツ言いながら、ある店の前を行ったり来たりしていた。
“蓮花ラーメン”
古びてしなびた、うらびれたその店は。
中を覗こうにも曇りガラスで見えないようになっていて。
昼飯時の割には、さっきから誰も入る様子もなかった。
「やってへんのかなあ。もしかしてラーメン屋ちゃうんかなあ。でも匂いはするし」
そして店の出入り口横に立てかけられている、看板の前で佇んだ。
「この“しゅくじょラーメン”って何やろう。淑女?淑女ってなんやったっけ?歳いった女の人の事やったっけ」
それは熟女だ。
神谷は淑女が何なのかを知らなかった。
「熟女と淑女の違いは何ですかって、聞きに行こうかな。ってアカンやん!ラーメン食えて怒られるわ!」
誰も聞いてないのに、海苔突っ込みをする神谷であった。
神谷信二。海苔屋勤務。
ノリ海苔でラーメン店の引き戸に手を掛けた。
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