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突き抜けるような青い空、輝く白亜の城壁、視界を多彩に染め上げる花吹雪。
この世の春を体現したような空間が、一面に広がる。祝福の鐘が遠くに鳴り響く。
「光莉!」
白鳩が飛び交う中、私は自らの名を示す言葉を耳にし、纏ったフリルを揺らしながら振り返った。視線の先にあるのは、白い馬に跨り王冠を帯びた、背の高い男性だった。
その声を認めるなり、私の表情は嬉々たるものに輝く。無意識が作り出すそれを一瞬遅れて認識した私は、恥ずかしさを感じながらも、そうさせた彼のもとへと駆け寄る。
隣に立った私に"白馬の王子"は笑顔を向け、色白な掌を広げると、そっと私の頭へ伸ばした。
ごっ。
流れから考えて全くありえない効果音と、予想以上の質量からなる衝撃が頭頂に襲い掛かった。
何故?
理解する余裕はない。
理解できない状況のまま光莉が倒れると同時に、光莉の見る世界はぐにゃりと歪んで溶けた。
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